補聴器購入に関して
補聴器購入の際、助成金を出してくれる市町村が全国的に急激に増えております。
認知症の予防と要介護の予防の観点からはとても喜ばしいことです。
旭川市周辺も同様ですが、既に実行している自治体もあれば、旭川市のように今年初めて試行する自治体もあります。
旭川市の場合、今年度は50名限定で、定員を超えた場合は抽選となります。 助成金の上限は5万円で、一人1回限りです。
さて、この制度を利用するにあたっては一部の自治体によっては、耳鼻咽喉科専門医、または補聴器相談医などの資格を持つという条件付きの耳鼻咽喉科医の作成した資料が必要となります。
今更ですが、当院院長は日本耳鼻咽喉科学会(正式には日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)の認める耳鼻咽喉科専門医であり、また補聴器相談医であります。
従いまして、このような助成金を申請する際の書類作成は可能です。
どうぞご安心下さい。
この助成金に関しては旭川市のホームページに詳しく記載されていますが、要点を記してみます。
- 65歳以上の方
- 自宅に住んでいる方
※グループホーム・老人ホームなどに住んでいる方は対象外 - 身体障害者(聴力)に該当するほど聴力が悪くない方
※聴力に関する身体障害者に該当する方は、補聴器を購入する際に受けとることができる助成金の額が異なります。 - 左右の聴力検査値が40デシベル以上の方
※この点は耳鼻科の病院・クリニックを受診して聴力検査を受けなければわかりませんが、雰囲気としては、日常会話で同じことを何度も聞き返しをする方 - 耳鼻科を受診して、補聴器が必要と認められた方
- 補聴器購入の前後でアンケートに回答できる方
※本人でなく、家族の方で代行可能です
補聴器購入に対する助成金制度は旭川市周辺では東川町・東神楽町・美瑛町・当麻町・上川町・幌加内町などで既に実施されていることを確認していますが、その他の自治体も当院が確認できていないだけで、既に実施されているかもしれません。
対象・条件・助成金の金額などは各自治体によって微妙に異なります。
例えば、美瑛町は対象が70才以上と一見条件が厳しいですが、聴力検査値は30デシベル以上の方からと、より難聴の程度が軽い方から対象としています。
助成金の上限も各自治体によって異なります。
関心のおありの方はお住まいの役場に問い合せてみたら良いかと存じます。
いずれにしても、今後はどの自治体もこの補聴器購入に対する助成金制度を前にすすめていくと思われます。
認知症と難聴と補聴器
えっ?えっ?…と聞き返す人
テレビの音が大きいと言われる人
知ってますか?
軽い難聴でも認知症になりやすいということを。
他人事ではありません。
認知症の予防に補聴器が有効
認知症を予防するためにできることは限られています。社会的孤立、喫煙、糖尿病などの生活習慣病等への対策がありますが、現実的な認知症予防対策で1番効果的なのは難聴対策であると、海外でも報告が出ています。
つまり補聴器装用が認知症予防に有効だと言うことです。
難聴が軽度の時期(早期)から補聴器を装用するとさらに効果的と言われています。
補聴器は認知症予防に有効であり、しかも、難聴が軽度の時期(早期)から補聴器を装用するとさらに効果的であることは、耳鼻科の学会では周知の事実となっています。
"えっ? えっ?" と聞き返しが多くなってきたなと感じた時、聞き間違いが多いなと思った時、テレビの音が大きいと言われた時、真剣に考えてみてください。
そんな場合、3回も聞き返すと嫌な顔をされた経験も多いのではないでしょうか?
嫌な顔されるのを嫌って、何と言ったかわからないままに
"うっ、うん"
なんて返答していませんか?
心当たりのある人はぜひぜひ耳鼻咽喉科を受診してください。
認知症と難聴と補聴器
難聴になると、周囲の人はその人と話すのが面倒になり、話しかけることが少なくなります。
難聴の本人も、人と話すのが面倒になり、結果として人と話す機会が減少し、社会的孤立へと向かい、認知症発症へとつながります。
補聴器をつけるということが、脳への刺激となります。難聴の期間が長いと、音を聞き言葉として理解するという脳の働きが鈍くなってしまっています。
補聴器で脳のリハビリ
補聴器を装用することにより、脳にどんどん音刺激を入れて、忘れていた脳の言葉を聞き分ける機能を回復させる、いわば脳のリハビリが重要になりますが、それには時間がかかる場合もあります。
一方、補聴器を装用することにより、今まで難聴のために聞こえていなかった日常の生活雑音が聞こえるようになります。その生活雑音がうるさくなり、それが脳の言葉を聞き分ける機能にとって邪魔になります。
この雑音に対しても、やはり脳のリハビリが必要となります。
メガネの場合は、受け取ったその日から使えるようになりますね。補聴器の場合は購入してからすぐに使える人もいますが、慣れるのに時間を要する人も多いです。難聴の程度が強い人ほど、難聴を放置していた期間が長い人ほど、その傾向が強くなり、人によっては1~3ヶ月もかかる場合もあります。
補聴器を買ってみたが、うるさくて使い物にならないのですぐに諦めてしまったり、普段は外していて、必要な時だけ補聴器をつけるという人がいます。
それでは脳が慣れる暇が無いので、いつまでたってもうまく使えません。
時々補聴器店で調整をしてもらいながら、うるさくても、耳障りでも、とにかく補聴器を使い続ける。朝起きたらすぐに補聴器をつけて、入浴時以外は寝るまで使い続ける。毎日毎日これを繰り返す。脳のリハビリですから、これが大事なポイントです。
補聴器と集音器の違い
補聴器は必要な音だけを大きくし、要らない音はできるだけカットするように設計されています。しかし、その目的は完璧には達成されていないので、人によっては雑音が耳障りで補聴器を諦めてしまう人がいるのです。
水道水の流れる音や茶碗を洗うガチャガチャという音、新聞紙を広げるバリバリという紙の音など、生活雑音が入って不快に感じる人も結構います。
"集音器"というものをよく通信販売やテレビの宣伝で目にします。
安価で買いやすいのですが、雑音をカットするという機能がないか、あっても弱いので、その点において補聴器には遠く呼びません。集音器とは、言わば補聴器モドキであって補聴器とは全く異なります。
補聴器と集音器の違いを理解しないまま集音器を試した人が
"いや、補聴器なんてあんなもの、うるさくて使えないわ!"
と言っているのをたまに耳にします。耳鼻科医としては
"ガセネタをばらまくのはやめて!"
"せっかく補聴器を試そうという人の気持ちを削がないで!"
という思いで聞いています。
補聴器は高価な買い物
さて、補聴器の値段ですが、これが問題です。片耳で100,000円〜200,000円程度のものが多いです。できれば両方の耳に装用した方が良いのですが、そうなると値段も2倍になります。(両耳同時だと割引がある場合もあるそうです。)
両耳に装用すると、相乗効果で片耳装用よりも、よりよく聞き取れます。また、音の方向感覚が生まれますので、余裕があれば、できる限り両方の耳に装用することをお勧めいたしますが、ご予算という都合もありますよね。
もっとも、補聴器に合う耳と合わない耳があります。例えば、右の耳は補聴器でよく聞こえるようになるのに、左の耳は音は聞こえるが、何を言ってるのさっぱり解らない、なんてこともたまにあります。そこは耳鼻科を受診して相談してください。
難聴のひどい人は聴力の身体障害者に該当する場合もあり、耳鼻科を受診すると申請書類を書いてくれます。その場合、それなりの助成金があるのですが、身体障害者になるほどの難聴でない場合は、ほとんど助成金がありませんでした。
しかし近年、身体障害者に該当しない程度の軽度〜中等度の難聴の人で、耳鼻科の補聴器相談医が補聴器が必要と判断したケースでは、数万円(30,000円〜50,000円が多い)程度の助成金を受けられる場合もあります。
具体的には、旭川市が今年(2024年)から50名限定で試行を始めました。
旭川近郊では東神楽、東川、美瑛、当麻、上川、幌加内などの町村で既に人数限定なしで実施しています。(他の町村でも実施中かもしれません。)
60歳を超えた人、聞き返し、聞き間違いが多くなったと感じた人、テレビの音が大きいと言われた人は、補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科を受診して、聴力検査を受けましょう。